大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成11年(行ケ)160号 判決

原告

ドクトル・インジェニエール・ハー・ツェー・エフ・ポルシェ・アクチェンゲゼルシャフト

代表者

【A】

訴訟代理人弁護士

加藤義明

鹿野直子

弁理士

【B】

被告

特許庁長官【C】

指定代理人

【D】】

【E】

【F】

【G】

主文

特許庁が平成10年審判第8761号事件について平成11年1月22日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1原告の求めた裁判

主文第1項同旨の判決。

第2事案の概要

1  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「車両のオートマチック伝動装置用回路装置」とする発明(本願発明)につき、1988年9月29日にドイツ連邦共和国においてした特許出願に基づく優先権を主張して、平成1年9月29日特許出願(特願平1-252489号)をしたところ、平成10年2月5日付の拒絶査定があったので、平成10年6月8日審判の請求をし、平成10年審判第8761号事件として審理された結果、平成11年1月22日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は平成11年2月8日原告に送達された。なお、出訴期間として90日が附加された。

2  本願発明の要旨(特許請求の範囲の請求項1に記載のもの。本判決において、特許請求の範囲に「切り替え」とあるのは、表記の統一上「切り換え」との表記に改めた。)

電子制御装置によって制御される、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置であって、

選択レバーを有し、該選択レバーを第1の切換路内で旋回することによって、自動的に切り換えられる種々のギヤ変速段をあらかじめ選択することができ、

前記選択レバー(1)は横路(12)を介して第2の切換路(13)に切り換えることができ、

該第2の切換路(13)は前記第1の切換路(2)に対して平行であり、

選択レバー(1)を第2の切換路(13)内で旋回することによって伝動装置の前進変速段(1,2,3,4)がマニュアルで切換可能である、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置において、

制御装置(11)が設けられており、

該制御装置は、センサ(14)により制御される切換ユニット(23,24)を有し、

前記センサ(14)は、第1の切換路(2)から第2の切換路(13)への切換を検出し、

前記切換ユニットによって、選択レバー(1)が第1の切換路(2)から第2の切換路(13)にシフトされる際、その時点で投入されているギヤ変速段(k)が少なくとも次の条件が満たされるときそのまま維持される、すなわち、

駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないか、または

下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないか、または

第2切換路(13)内で選択レバー(1)が未だ旋回されないとき、そのまま維持される、ことを特徴とする、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置。

3  審決の理由の要点

(1)  本願発明の要旨

前項のとおりと認める。

(2)  引用例記載の発明

これに対して、原査定において平成9年1月8日付けで通知した拒絶の理由で引用した、本件出願前の頒布刊行物である「自動車技術」Vol.41,No.2,(1987年2月1日、社団法人自動車技術会発行)の255頁~264頁(引用例イ)には、本願発明と同一の技術分野に属するものと認められる車両の自動変速装置用の回路装置が記載されており、特にその262頁左欄11行~16行及び図5,図10に、以下の事項が記載されている。

(構成要件の名称は、対応の明らかなものについては本願発明の構成要件の名称に読み替え、必要に応じて引用例イに記載の発明の構成要件の名称あるいは符号、図番をかっこ内に記載する。)

「電子制御装置によって制御される、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置(図5参照。)であって、

選択レバー(図5,図10参照。)を有し、該選択レバーを第1の切換路内で旋回することによって、自動的に切り換えられる種々のギヤ変速段をあらかじめ選択することができ、

前記選択レバーは第2の切換路に切り換えることができ、

該第2の切換路は前記第1の切換路に対して直角であり(図5,図10参照。)、

選択レバーを第2の切換路内で旋回することによって伝動装置の前進変速段がマニュアルで切換可能である、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置において、

制御装置(図5の駆動系コンピュータ参照。)が設けられており、

該制御装置は、切換ユニット(図5のギヤ制御、クラッチ制御参照。)を有し、

前記切換ユニットによって、選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際、その時点で投入されているギヤ変速段がそのまま維持される、すなわち、

第2切換路内で選択レバーが未だ旋回されないとき、そのまま維持される、車両のオートマチック伝動装置用の回路装置。」

(3)  本願発明と引用例イ記載の発明の対比

本願発明と引用例イ記載の発明とを比較してみると、両者は以下の3点において相違し、その他は一致している。

A 本願発明においては、「選択レバー(1)は横路(12)を介して第2の切換路(13)に切り換えることができ、該第2の切換路(13)は第1の切換路(2)に対して平行」であるのに対し、

引用例イ記載の発明においては、その図5,図10からみて「選択レバーは第2の切換路に切り換えることができ、該第2の切換路は前記第1の切換路に対して直角」である点。(相違点A)

B 本願発明においては、「制御装置は、センサ(14)により制御される切換ユニット(23,24)を有し、センサ(14)は、第1の切換路(2)から第2の切換路(13)への切換を検出する」のに対し、

引用例記載の発明においては、切換を検出するセンサについては明示の記載がなく、「制御装置は、切換ユニットを有する」ものである点。(相違点B)

C 本願発明においては、切換ユニットによって、選択レバー(1)が第1の切換路(2)から第2の切換路(13)にシフトされる際、その時点で投入されているギヤ変速段(k)がそのまま維持される条件を、少なくとも次の条件、

「駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないか、または下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないか、または第2切換路(13)内で選択レバー(1)が未だ旋回されないとき」が満たされるとき、としているのに対し、

引用例イ記載の発明においては、引用例イの262頁左欄11行~14行の

「「D」位置から「HOLD」位置にすると「D」位置の時のギヤが保持され、この位置にてレバーを「UP」方向又は「DOWN」方向に押すごとに一段ずつ「シフトアップ」又は「シフトダウン」される。」という記載からみて、対応する条件が、「第2切換路内で選択レバーが未だ旋回されないとき」である点。(相違点C)

(4)  相違点Aについての審決の判断

原査定において平成9年1月8日付けで通知した拒絶の理由で引用し、本件に係る特許出願前に頒布された刊行物である特開昭60-252853号公報(引用例ロ)には、その第8図(b)に、本願発明と同一の技術分野に属するものと認められる車両の自動変速装置用の選択レバー102が第1の切換路と第2の切換路とが横路を介して切り換えることができ、かつ、第1の切換路と第2の切換路が平行である選択レバー102の切換路が記載されている。

そして、オートマチック伝動装置においてマニュアルでも変速可能とする課題の共通性からみて、引用例イに記載された車両のオートマチック伝動装置用の互いに直角である第1の切換路と第2の切換路に代えて、引用例ロ記載の互いに平行な切換路及び横路を採用することは、単なる選択事項であり、当業者において困難はない。

(5)  相違点Bについての審決の判断

引用例イには、明文の記載として選択レバーの第1の切換路と第2の切換路との切り換えを検出するセンサはないが、引用例イの262頁左欄11行~14行には、「「D」位置から「HOLD」位置にすると「D」位置の時のギヤが保持され、この位置にてレバーを「UP」方向又は「DOWN」方向に押すごとに一段ずつ「シフトアップ」又は「シフトダウン」される。」と記載されている。

この記載からみると、セレクトレバーを「D」位置から「HOLD」位置にすると「D」位置の時のギヤ、すなわち、セレクトレバーの動作前に使用されていた1速ないし最高段速のギヤのいずれかがそのまま保持されることは明らかである。

そして、セレクトレバーを「HOLD」位置に動作させたとき、その時点(レバーを「UP」方向又は「DOWN」方向に押さない時点)で使用されていたギヤが保持されるのであるから、そのためには、「セレクトレバーを「HOLD」位置に動作させたことを検知するセンサー。」が必要であることは当業者において明らかである。

したがって、相違点Bは、引用例イ記載の発明において必須の構成で、かつ、自明の構成でもあるセンサーを本願発明において明記したものにすぎず、当業者が容易に想到可能な記載上の相違にすぎない。

(6)  相違点Cについての審決の判断

相違点Cに係る、

「選択レバー(1)が第1の切換路(2)から第2の切換路(13)にシフトされる際、その時点で投入されているギヤ変速段(k)がそのまま維持される条件」

として、

「駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないか、または下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないか、」

を条件とする点は、課題としては内燃機関の過大回転あるいは過小回転による支障をなくするために通常実施される周知のものである。(自動変速モードではあるが、引用例ロの4頁左下欄~右下欄における記載(イ)(ロ)(ハ)参照。)

そして、引用例ロの8頁左下欄~右下欄に強制シフト(本願発明の第2の切換路におけるシフトに相当。)のときの制御として、概略次の事項が記載されている。

「(3)シフトアップするとエンジン回転数が・・・アイドリング回転数以下になるかどうかを判定する。・・・」、

「(4)現ギヤ段からシフトダウンするとオーバーレブするかどうか判定する。・・・オーバーレブするときには次の判定に移る。」、

「(5)オーバーレブするとタイマーが作動を開始する・・・タイマーを1秒程度作動させ、その1秒間のみシフトダウンする。・・・」

旨の記載があり、引用例ロ記載の発明においても、過大回転あるいは過小回転による支障をなくするよう、本願発明と同じ条件のとき、ギヤ変速段がそのまま維持するか、タイマーで短時間のみ変速するように制御している。

そして、過大回転となるときに、引用例ロ記載の発明のようにタイマーによる制御を行わず、単にシフトダウンを行わないようにすることは、単なる構成の一部削除(タイマーで短時間のみ変速するような制御を行わないこと。)により容易にできる設計変更である。

よって、相違点Cは引用例ロ記載の発明から容易に想到し得る程度の設計変更である。

(7)  審決のむすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用例イ及び引用例ロに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3原告主張の審決取消事由

1  取消事由1(相違点Aの判断の誤り)

(1)  引用例イの切換路(別紙図面2(引用例イ)参照)には、第1切換路から第2の切換路へ明確に分離している本願発明の横路に相当する部分が存在せず、例えばHOLDの位置からドライブDの位置に切り換えようとするとき誤ってニュートラルのNの位置に切り換えられる可能性があり、自動車の惰性による走行状態となり自動車は急速に速度低下し、後続車による追突の危険が生ずるおそれがある。

これに対して本願発明では、選択レバー1を第2の切換路から第1の切換路に切り換える場合、横路により規制されてドライブDの位置にしか入らず、ニュートラルの位置Nに入る誤操作は絶対生じない(別紙図面1(本願発明)参照)。

(2)  引用例ロの第8図(b)(別紙図面3(引用例ロ)参照)と、シフトアップポジションやシフトダウンポジションで自動変速レバーから手を離せば自動的にばね力によりドライブポジションに復帰するとの記載(引用例ロ5頁左下欄10~15行)からみて、引用例ロ記載の発明では、ドライブポジションDの黒点位置とシフトアップ、ダウンポジションの黒点とを結ぶ直線に沿って切換運動が行われるとみるのが最も合理的であるから、自動変速レバーの切換路はV字形の切換路となる。

そして、シフトアップもシフトダウンもDのときから1段だけしか行えず、V字形の路をとるから、D⇔SHIFT UP,D⇔SHIFT DOWNの2つの切換路があるとみることもでき、かつ、両切換路はN⇔D切換路とは平行でない。

したがって、引用例イのドライビングポジションDのところに引用例ロの横倒しT字形開口部を連接させた場合にはHOLD位置をとれなくなり、また、移動経路はDを底としたV字状になりシフトアップ、ダウンを連続して行うことができない方式であって、単にドライビングポジションの時のギヤ段より一段だけギヤ段を上げるか下げることができるものが得られるにすぎない。

(3)  以上のとおり、審決は、相違点Aについて判断するに当たり、引用例ロの技術内容を誤認し、その結果、本願発明と引用例イとの間の相違点Aに関する判断を誤ったものである。

2  取消事由2(相違点Bの判断の誤り)

(1)  引用例イのうち審決引用の262頁左欄11行~14行に記載された動作を実現するためには、引用例イについて、「セレクトレバーを「HOLD」位置に動作させたことを検知するセンサーが必要である」とはいえず、このセンサーが必要であることは当業者において明らかであるとした審決の判断は誤りである。

すなわち、セレクトレバーと連動して回転するディスクカムを設けディスクカムの作動突起の形状としてD位置に来たときスイッチをオンにしHOLD位置まで、そのオンの状態を保つよう突起幅を選べば、D位置からHOLD位置に移動させたことを検知するセンサは必要としない。そして、引用例イの同頁左欄36~37行の「尚、「R」「N」「D」「HOLD」のレバー位置検出には数本のスライド式接点によるパラレル信号を用い、」との記載からすると、引用例イにおいては、上記のようなスイッチを意図しているものであることは明らかである。

しかも、HOLD位置にセンサを設けたとしても、第1の切換路から第2の切換路への切換を検出することはできない。すなわち、それは、セレクトレバーを第1の切換路から第2の切換路へ切り換えて、HOLD位置に来たのか、SHIFTUP位置からHOLD位置に戻って来たのか、SHIFTDOWN位置からHOLD位置に戻って来たのか、一義的に決定できないからである。

さらに、引用例イに記載のところによれば、HOLD位置でD位置のギヤが保持されるだけであるが、本願発明においては、ニュートラル中央位置(HOLD)では、引用例イとは異なり内燃機関の回転数が上側限界回転数を上回っていたり、及び下側限界回転数を下回っていれば、D位置のギヤ段は保持されずシフトアップないしシフトダウンされるのである。

(2)  したがって、相違点Bにおける、本願発明の第1の切換路から第2の切換路への切換を検出するセンサは、引用例イに記載のものから当業者が容易に想到可能なものではなく、これを、当業者が容易に相当可能な記載上の相違にすぎないとした審決の判断は誤りである。

3  取消事由3(相違点Cの判断の誤り)

(1)  本願発明においては、切換ユニットにおいて選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際その時点で投入されているギヤ変速段が維持される条件として、

a. 駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないか、

b. 下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないか、

c. 第2切換路(13)内で選択レバー(1)が未だ旋回されないとき、

を設定している。本願発明のこの条件は、選択レバーをHOLD位置にするとD位置の時のギヤ段が保持されるのみである引用例イに記載のものの条件とは異なる。

(2)  また、本願発明では、a~cの条件が一つでも満たされないときにはギヤ変速段の維持が行われず、切換が行われる。つまり、選択レバーが未旋回であっても、

① 駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を上回っている場合、D位置のときのギヤ段が保持されず、

② 駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が下側限界回転数(nmin)を下回っている場合も、D位置のギヤ段が保持されない。

したがって、本願発明のこの条件は、ギヤ段が保持される引用例イ記載のものとは異なるものである。

(3)  引用例ロに記載の発明は、選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる瞬時投入されているギヤ変速段を維持しておく構成を具備しないもの、すなわち、第2の切換路内で選択レバーを旋回しないときの位置を有しないものであり、本願発明のギヤ変速段を保持する条件は、引用例ロには記載されていない。

また、引用例ロには、

「(2)自動変速レバー102がシフトアップポジションSHIFT UPに入っているかシフトダウンポジションSHIFT DOWNに入っているかを判定する。シフトアップポジションに入っていれば次の(3)の判定に移り、シフトダウンポジションに入っていれば後の(4)の判定に移る。」(8頁左下欄4行~9行)、

と記載されているから、引用例ロに記載の発明では、自動変速レバー102が既にシフトアップポジション、シフトダウンポジションに入った後に判断をしていることが明らかである。

したがって、引用例ロにおいては、選択レバーをシフトアップ、ダウンに切り換えた後で、しかも現ギヤ段から1段シフトアップ、ダウンしたときのエンジン回転数を判定に利用しているのであって、本願発明のように、現在投入されている変速段において条件をチェックすることは行われていない。

引用例ロに記載の発明から本願発明のチェック条件を導入することは、当業者が容易に想到し得る程度の設計変更には当たらない。これに反する前提の下に相違点Cについてした審決の判断は誤りである。

(4)  被告提出の乙第1号証(特開昭63-219947号公報)及び乙第2号証(特開昭62-37555号公報)に示すものは、そもそもHOLDレンジから出発してシフトアップまたはシフトダウンの切換を行うために選択レバーを旋回する構成のものではない。

したがって、引用例イに記載のもののHOLD位置でD位置のときにある速度段に固定保持し、そこから選択レバーをシフトアップ又はシフトダウンのため旋回する構成のものに、乙第1号証、乙第2号証に示されている構成を組み合わせるという構想は当業者には生じない。ドライバーは選択レバーを介して変速段の切換による直接介入制御により、過大回転を回避できるからである。

第4審決取消事由に対する被告の反論

1  取消事由1に対して

(1)  引用例ロの第8図(b)によれば、二つの通路を切り換えることのできる通路(車両進行方向からみて「横路」)が存在することが認められる。

そして、レバーを案内したり誘導する溝は、レバーの溝を特定の範囲で規制するためのものであって、仮に溝の幅に遊びがあっても、その遊びによるレバーの動きを以て通路や横路の形状とみることに合理性はなく、選択レバーがV字状の移動経路を通るようなことは引用例ロに記載されているとはいえない。

(2)  第2の切換路内の選択レバーの機能は、引用例イに記載されており、引用例ロから引用した点は、審決が認定したとおり「・・・選択レバー102が第1の切換路と第2の切換路とが横路を介して切り換えることができ、かつ、第1の切換路と第2の切換路が平行である選択レバー102の切換路が記載されている。」点である。

そして、引用例イ記載の発明に引用例ロ記載の発明を適用すれば、通路の形状としては原告も認めるような形状となり、「・・・前記選択レバー(1)は横路(12)を介して第2の切換路(13)に切り換えることができ、該第2の切換路(13)は前記第1の切換路(2)に対して平行であり、選択レバー(1)を第2の切換路(13)内で旋回することによって伝動装置の前進変速段(1,2,3,4)がマニュアルで切換可能である」という選択レバーの通路が容易に想到し得るものである。

2  取消事由2に対して

(1)  審決で適示した引用例イの記載(262頁左欄11~14行)からみると、第1の切換路(R-N-Dの切換路)と第2の切換路(DOWN-HOLD-UPの切換路)との切換時に、選択レバーが第2の切換路に移動されたことを検知することが前提とされているから、当該「検知すること」は、本願発明における、「センサ(14)は、第1の切換路(2)から第2の切換路(13)への切換を検出し、」(請求項1の記載)という構成に相当するものであり、センサーの設けられている位置自体は明らかでなくても、少なくともセレクトレバーをHOLD位置に動作させたことを検知することができるものである。

そして、セレクトレバーをD位置からHOLD位置にすると、セレクトレバーの動作前に使用されていた1速ないし最高段速のギヤのいずれかがそのまま保持されることは明らかである。

3  取消事由3に対して

(1)  審決は、本願発明の条件c(第2切換路(13)内で選択レバー(1)が未だ旋回されないとき)は、根拠を挙げた上で引用例イに既に記載されていると認定している。

(2)  本願発明の条件aとbは、内燃機関に過大回転や過小回転が生じることを防止するために設けられる周知の条件にすぎない。

すなわち、この引用例ロ記載の周知の手段は自動変速モード(Dレンジ)において適用されているが、本願発明においては第2の切換路13(手動で変速可能なモードの切換路)における変速段において適用されている点で一応の相違があることを認めた上で、内燃機関の破損を招く過大回転や内燃機関の停止を招く過小回転を防止する制御を行うことは自動変速モードにおいては周知であるとしたものである。

そして、引用例ロには、手動で変速可能なモードにおいても、シフトアップ時やシフトダウン時ではあるが、内燃機関の過大回転あるいは過小回転が生じないよう制御する点が記載されているから、これを引用例イ記載の保持されたギヤ段(引用例イ262頁左欄12行~15行の記載参照)に適用して、該保持されたギヤ段において内燃機関の破損や停止を防止する条件を定め、条件が満たされるとき(内燃機関の過大回転や過小回転が生じないとき)には特段の制御をせずにそのままの変速段を維持するようにし、条件が満たされないとき(内燃機関が過大回転あるいは過小回転するとき)には内燃機関の破損や停止を防止するよう変速制御する程度のことは、内燃機関の破損や停止が望ましくないことが自明である点からみて、容易に想到し得るとしたものである。

(3)  このように、審決は、引用例イ記載の発明には本願発明のギヤ変速段がそのまま維持される3つの条件がすべて記載されているわけではないことを認めた上で、引用例イ記載の発明に引用例ロ記載の発明を適用することにより、本願発明のような3つの条件を規定することは、容易に想到できる程度のこととしたものである。

(4)  自動的に変速を行うDレンジにおいては、通常、内燃機関の過大回転や過小回転による問題は自動的に回避できるものの、3速、2速、1速レンジに選択レバーを旋回した場合には、すなわち、適宜の変速レンジのまま走行した場合には、内燃機関の過大回転や過小回転による問題が生じ得ることは自明である。本願発明も、選択レバ-が第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際、その直前にDレンジにおいて選択されていたギヤ段が維持されるものであり、そのような場合の内燃機関の過大回転や過小回転に対する安全対策は、周知のものである。

例えば、

① 乙第1号証(特開昭63-219947号公報)に、その出願時における従来技術の説明として、「1速または2速のホールドレンジを選択した場合でも、車速が所定値以上のときには強制的にアップシフト操作してエンジンの過回転を防止するようにした装置が知られている。」が記載されており、

② 乙第2号証(特開昭62-37555号公報)に、「ホールドレンジにおいて走行不能な車速に低下した場合にシフトダウンを行う手段を設けた自動トランスミッション」と記載されていることからも明らかである。

(5)  これらの点からみて、本願発明に係るa,bの条件のときにギヤ変速段を維持し、条件が満たされなければギヤ変速段を維持しないようなことは課題としては自明のものであるといえる。そしてその解決手段も周知であるから、「相違点Cは引用例ロ記載の発明から容易に想到し得る程度の設計変更である。」とした審決の判断に誤りはない。

第5当裁判所の判断

1  相違点Bの判断について

(1)  本願発明の特許請求の範囲請求項1の記載によれば、本願発明は、

① 第1の切換路が自動変速であり、第2の切換路は手動による前進変速段の切換であること、

② センサが選択レバーの第1の切換路から第2の切換路への切換を検出すること、

③ ギヤを維持するための3つの条件、

a. 駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないか、又は

b. 下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないか、又は

c. 第2切換路(13)内で選択レバー(1)がいまだ旋回されないとき、

の判断が、選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際に行われるものであること、

以上の構成を採用しているものであり、本願発明のセンサは、選択レバーの第1の切換路から第2の切換路への切換を検出するものであることが明らかである。

(2)  これに対し、甲第5号証によれば、引用例イのセレクト(選択)レバーのHOLD位置に至る動きとして、D→HOLD、HOLD→UP→HOLD、HOLD→DOWN→HOLDの三種類の状況が考えられるが、いずれの状況においても、HOLD位置では直前に選択されていたギヤ変速段を保持するだけで変わりはないから、引用例イにおいては、その三種類の区別を検出する必要がないことが自明である。そして、甲第5号証(引用例イ)によれば、引用例イには、「尚、「R」「N」「D」「HOLD」のレバー位置検出には数本のスライド式接点によるパラレル信号を用い、誤判定による誤作動の発生を防止している。」(262頁36~38行)との記載があることが認められるから、選択レバーはHOLD位置に存在するか否かを検出するセンサーであって、DからHOLDへの選択レバーの移動を検出するセンサーではない。

したがって、引用例イに記載の発明において「「セレクトレバーを「HOLD」位置に動作させたことを検知するセンサー。」が必要であることは当業者において明らかである。」とした、相違点Bの判断中の審決の認定は誤りである。

(3)  以上の相違点Bに関する本願発明の構成と引用例イの記載から認められる技術的事項とを対比すると、相違点Bは当業者が容易に想到可能な記載上の相違にすぎないと認めることはできず、「相違点Bは、引用例イ記載の発明において必須の構成で、かつ、自明の構成でもあるセンサーを本願発明において明記したものにすぎず、当業者が容易に想到可能な記載上の相違にすぎない」とした審決の判断は誤りである。

(4)  なお、本願発明の構成を別の視点からみて整理すると、本願発明は、

「選択レバーが第2の切換路で未旋回であっても、

a′駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を上回っているか、又は、

b′下側限界回転数(nmin)を下回っている場合は、ギヤ変速段が切り換えられる、」

という構成を採用するものと解釈することができる。この点は原告が主張するところであり、被告も、選択レバーが未旋回であってもギア変速段が切り換えられる場合のあることについては争っていない。

上記相違点Bに関する判断は、本願発明のこの解釈に基づけば理解しやすいし、この解釈は、もとより、甲第2ないし第4号証(願書、平成9年8月22日付け及び平成10年7月8日付け手続補正書)の本願明細書の記載と矛盾するものではない。そして、甲第4号証によれば、本願発明の平成10年7月8日付け手続補正書に明細書の補正として

「上記課題は本発明により、次のように構成して解決される。すなわち、制御装置が設けられており、該制御装置は、センサにより制御される切換ユニットを有し、前記センサは、第1の切換路から第2の切換路への切換を検出し、前記切換ユニットによって、選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際、その時点で投入されているギア変速段が少なくとも次の条件が満たされるときそのまま維持される、すなわち、駆動内燃機関の回転数が上側限界回転数を未だ上回っていないか、または下側限界回転数を未だ下回っていないか、または第2切換路内で選択レバーが未だ旋回されないとき、そのまま維持されるように構成して解決される。

このような構成を採用したことの利点は、運転者が選択レバーを一方の通路から他方の通路に切り換え、未だ第2の通路内で旋回を行わずにシフトアップないしはシフトダウンのタイミングを見計らっているときに不所望のギヤ切換が回避されることである。これにより運転者は、マニュアルギヤの車を操作しているのと同様の操作感覚が得られる。」

との記載があることが認められる。この記載も併せ考慮すると、本願発明は、選択レバーを第1の切換路から第2の切換路に切り換えた際、未旋回位置でギアシフトが起こることを前提として、センサーにより制御される切換ユニットによって、原則的にはギヤが維持され、ギアシフトが回避されるようにすることを本願発明の目的としているものということができ、上記解釈による構成もその目的に沿うものとして理解することができる。もっとも、この解釈は、本願明細書の記載から一目瞭然に判明するとはいい難い点もあるので、別の機会に明細書の記載の補正がされることが望ましい。

2  相違点Cの判断について

(1)  審決は、「相違点Cに係わる、・・・を条件とする点は、課題としては内燃機関の過大回転あるいは過小回転による支障をなくするために通常実施される周知のものである。(自動変速モードではあるが、引用例ロの4頁左下欄~右下欄における記載(イ)(ロ)(ハ)参照。)」と認定している。

(2)  甲第6号証(引用例ロ)によれば、引用例ロの特許請求の範囲の(1)には、

「(イ)自動変速レバーからのドライブポジション信号が、運転状況に応じた最適な前進ギヤ段に入れてオートドライブにするような指令である場合には、その時点のエンジン回転数が、エンジン回転数とアクセル開度の関係から求まる低域回転数と高域回転数との間の回転数である常用回転数領域内に入るか否かを判定し、常用回転数領域内であれば現ギヤ段を保持するようにクラッチ自動制御装置及びトランスミッション切換装置を制御し、常用回転数領域外であればエンジン回転数が常用回転数領域内になるようなギヤ段のうちの高位のギヤ段を選出し、この選出したギヤ段ヘギヤ切換を行うようにクラッチ自動制御装置及びトランスミッション切換装置を制御し、

(ロ) 自動変速レバーからのドライブポジション信号が、現ギヤ段に対して強制的にギヤ段を上げるような指令である場合には、ギヤ段を上げた場合にエンジン回転数がアイドリング回転数より小さくならないことを条件に、ギア段を上げるようクラッチ自動制御装置及びトランスミッション切換装置を制御し、

(ハ) 自動変速レバーからのドライブポジション信号が、現ギヤ段に対して強制的にギヤ段を下げるような指令である場合には、ギヤ段を下げた場合にエンジン回転数が過回転にならないことを条件に、ギヤ段を下げるようクラッチ自動制御装置及びトランスミッション切換装置を制御することを特徴とする自動変速システム。」

と記載されていることが認められる。

(3)  そして、この記載から、常用回転数領域に入っていれば内燃機関の破損や停止を招くことがないということはいえるとしても、常用回転数の上限と下限が内燃機関の破損や停止を招く回転数と同じ回転数であると認めるのは困難である。

上記(イ)の記載によれば、引用例ロに記載の発明においてオートドライブ(自動変速)において実現されているのは、常用回転数領域内に入るか否かの判定と常用回転数に入るようにする制御にとどまるから、引用例ロの上記記載から、被告の主張するように「内燃機関の破損を招く過大回転や内燃機関の停止を招く過小回転を防止する制御を行うこと」は自動変速モードにおいては周知である、と認めることはできない。

(4)  また、上記(ロ)、(ハ)の記載は手動によるギヤの強制切換についての説明であるから、(ロ)と(ハ)の記載から、内燃機関の破損を招く過大回転や内燃機関の停止を招く過小回転を防止する制御を行うことは「自動変速モードにおいては周知である。」と認めることもできない。

(5)  前記1(1)でみたとおり、本願発明は、ギヤを維持するために、a.駆動内燃機関(18)の回転数(nmot)が上側限界回転数(nmax)を未だ上回っていないこと、b.下側限界回転数(nmin)を未だ下回っていないことを条件として挙げている。

審決が相違点Cについて判断した説示からすると、審決は、過大回転をオーバーレブ回転数以上と、過小回転をアイドリング回転数以下との意味で理解して、審決が認定した引用例ロの(3)、(4)の記載、すなわち、

「(3) シフトアップするとエンジン回転数が・・・アイドリング回転数以下になるかどうかを判定する。・・・

(4)  現ギヤ段からシフトダウンするとオーバーレブするかどうか判定する。・・・オーバーレブするときには次の判定に移る。」

との記載の構成が、本願発明のa、bと同じ条件であると認定しているものと理解される。

しかしながら、甲第6号証(引用例ロ)によれば、引用例ロの記載「(3)~(5)」の前の8頁左下欄2~9行に、

「(1) 車速が3㎞/h以上で強制シフト変更の指示があったときにこのサブルーチンに入る。

(2) 自動変速レバー102がシフトアップポジションSHIFT UPに入っているかシフトダウンポジションSHIFT DOWNに入っているかを判定する。シフトアップポジションに入っていれば次の(3)の判定に移り、シフトダウンポジションに入っていれば後の(4)の判定に移る。」

と記載されていることが認められる。この記載によれば、審決が認定した引用例ロの(3)、(4)の判定は、自動変速レバーが既にシフトアップポジションあるいはシフトダウンポジションに入った後(すなわち強制シフトアップあるいはダウンの指令が出された後)にされるものであることが明らかである。

(6)  これに対し、本願発明では、条件a~cの判断は選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際に行われるものであることは前示のとおりであるから、いまだ強制シフトアップ、ダウンの指令は出されておらず、強制シフトアップ、ダウンの指令が出された後にされる引用例ロの判定(3)、(4)の条件が、本願発明の上記a、bと同じ条件であるということはできない。

すなわち、本願発明では、第1の切換路から第2の切換路への切換えを検出するセンサにより制御される切換ユニットによって条件a、b、cが判断されるものであり、その判断結果により選択レバーは未旋回の状態(条件c)をとることができるので、条件判断時には強制シフトアップあるいはダウンの指令は出されていない。そして、その指令が出されない以上、第2の切換路では強制シフトアップあるいは強制シフトダウンは実行されないから、「シフトアップすると・・・」、「シフトダウンすると・・・」というギヤシフトを仮定して、アイドリング回転数以下になるかオーバーレブする回転数になるかの判断は、選択レバーが未旋回の状態おいては必要がないものである。

また、条件判断の後直ちに強制シフトアップ、ダウンが実行されるとは限らないし、未旋回の間に内燃機関の回転数や車の走行速度は変化するので、本願発明の切換ユニットによりなされた内燃機関回転数についての判断が、強制シフトアップやダウンの実行指令が出たとき(選択レバーが未旋回位置から旋回された時)において、アイドリング回転数以下になるかオーバーレブする回転数になるかの判断として、そのまま利用することができるものではないというべきである。

(7)  したがって、引用例ロの(3)、(4)が本願発明の上記a、bと同じ条件であると認めることはできない。審決は、そのことを前提として、「相違点Cは引用例ロ記載の発明から容易に想到し得る程度の設計変更である」と判断したものであって、この判断は誤った前提によったものであり、誤りである。

(8)  被告は、引用例ロには、手動で変速可能なモードにおいても、シフトアップ時やシフトダウン時ではあるが、内燃機関の過大回転あるいは過小回転が生じないよう制御する点が記載されているから、これを引用例イ記載のHOLDの位置で保持されたギヤ段に適用して、保持されたギヤ段において内燃機関の破損や停止を防止する条件を定め、条件が満たされるとき(内燃機関の過大回転や過小回転が生じないとき)には特段の制御をせずにそのままの変速段を維持するようにし、条件が満たされないとき(内燃機関が過大回転あるいは過小回転するとき)には内燃機関の破損や停止を防止するよう変速制御する程度のことは、内燃機関の破損や停止が望ましくないことが自明である点からみて、相違点Cの点の本願発明の構成は容易に想到し得ると主張する。

しかしながら、引用例イにおいてHOLD位置はギヤを保持するだけであり、また、もともとギヤの手動切換を意図しているから、HOLD位置で内燃機関が過大回転あるいは過小回転となっても運転者の意志により強制シフトアップやシフトダウンができ、引用例イに記載の発明においては、未旋回であっても限界回転数と比較して自動的にギヤ切換を行うという発想がないことは明らかである。

次に、引用例ロ記載の発明においてはHOLD位置がないから、被告主張のように引用例イ記載の発明におけるHOLD位置及びギヤ維持機能と引用例ロ記載の発明における技術を組み合わせたとしても、HOLD位置の機能として、引用例イに記載のHOLD位置における機能以上のものは得られないというべきである。

そして、引用例イ記載の発明においては、HOLD位置のほかに引用例ロと同様の手動による強制シフトアップポジション(UP位置)と強制シフトダウンポジション(DOWN位置)を有するので、仮に、審決認定の引用例ロにおける条件(3)や(4)とその後の制御を引用例イに記載の発明に適用しようとすれば、これをUP位置、DOWN位置に設けることが当業者にとって容易に想到し得ることと解されるのであり、それを避けて、HOLD位置の機能として組み込むことは困難であると認められる。

(9)  被告は、変速レンジを固定して走行した場合には、内燃機関の過大回転や過小回転による問題が生じ得るのは自明のことであり、本願発明も、選択レバーが第1の切換路から第2の切換路にシフトされる際、その時点で投入されているギヤ変速段が維持される、すなわち、その直前にDレンジにおいて選択されていたギヤ段が維持されるものであり、そのような場合の内燃機関の過大回転や過小回転に対する安全対策は、乙第1号証(特開昭63-219947号公報)及び第2号証(特開昭62-37555号公報)に記載されているように周知の技術である、と主張する。

しかしながら、被告が主張する周知技術は変速レンジを固定して走行することを前提としたものであって、引用例ロ記載の発明と異なるものであり、仮に被告主張の周知技術を採用すれば、引用例ロ記載の技術は不要となるものと認められる。したがって、被告主張の周知技術は、「相違点Cは引用例ロ記載の発明から容易に想到し得る程度の設計変更である。」とした審決の判断の裏付けとなるものではない。

(10)  以上のとおりであり、相違点Cについてした審決の判断は誤りである。

第6結論

以上のとおり、原告主張の審決取消事由2、3は理由があり、その余の取消事由について判断するまでもなく原告の請求は認容されるべきである。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 橋本英史)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例